アイワゾフスキー Айвазовский, Иван
/Ованес/ Константинович (1817-1900) |
ロシアの偉大な海洋画家であり、世界的にも高く評価されているイワン・コンスタンチノビッチ・アイワゾフスキーは1817年7月29日にフェオドシアの貧しいアルメニア人の商人の家に生まれた。
まだ子供のころ、暇な時はいつも海岸で過ごしていた。何時間もとらえることのできない波を見つめていた。波は高くなり、泡立ち、消え、動き、ずっとその形を変え続け、そしていつもすばらしい。
ケルチ市のカズナチェフ市長はフェオドシアを通りがかった時に、少年が街灯の柱に何かを描いているのを見かけた。カズナチェフ市長はその絵を見て、非常に驚きその少年の両親を訪れ、その子の面倒を見ることになった。アイワゾフスキーは市長の家に暮らして初めて学問の知識を得た。
別の援助者のナルシキナは、遠い町では教育が不十分だと考え、彼が13歳の時、彼の絵をモスクワの有名な画家のサリバトル・トンチへ送った。彼はアイワゾフスキーの絵を皇帝に見せ、「この子は外国人を驚かせることになるだろう」と言った。
皇帝ニコライ一世はアイワゾフスキーをペテルブルグ美術アカデミーの寄宿生にすることを決めた。そして、この画家の将来の運命が決められた。
アイワゾフスキーの海洋画の先生はフィリップ・トンネルであった。この師から水を描くことの基礎を学び、それからアイワゾフスキーは独自の画法を作っていった。この種の絵の最初は1835年に描かれた「海の上の空の習作」である。これで彼は銀賞を受賞した。それ以来アイワゾフスキーは特にこの種の風景画を描いた。
1837年に3枚の海洋画と「なぎ」の絵によって金賞を受賞した。これによってアカデミーでの学習は2年間短縮され、この2年間でクリミアの諸都市の絵を描くことになった。こうして、セバストーポリやケルチやヤルタの風景画、「月の夜」「嵐」の絵が描かれた。
クリミアでアイワゾフスキーは有名な艦隊司令官のミハイル・ラザレフ、ウラジミール・コルニロフ、パーベル・ナヒモフと知り合った。こうして海上訓練の様子や軍艦の動きを知ることができた。これを元に、初めての戦争画「スバシでの海兵隊の上陸」を描いた。この絵は美術アカデミーに展示され、褒美としてアイワゾフスキーはイタリアへ行くことになった。
アイワゾフスキーは1843年にヨーロッパ旅行を終え、絵の展示会を開いた。彼はアムステルダムとサンクト・ペテルブルグにおける美術アカデミーのアカデミー会員の称号を得た。
1845年にリトケ艦隊の航海に参加し、一連の有名な作品を描いた。バルト海から戻り、彼はフェオドシアに住んでアトリエを作った。ここで世界的に有名な作品「第九の怒涛」(1850年)、「波」(1889年)が描かれた。1847年にアイワゾフスキーは美術教授となり、貴族の称号を与えられた。
アイワゾフスキーの戦争画の貢献も忘れてはならない。1844年に「海軍司令部」の画家の称号を得た。彼はセバストーポリ防衛隊の様子をあざやかに描いている。また、ロシアの水兵やロシア艦隊の活躍にも目を向けている。それは「ナバラ海戦」(1848年)、「チェスマ海戦」(1848年)に描かれている。
1865年にアイワゾフスキーはフェオドシアに美術学校を開設した。1871年に考古学博物館、1880年に地方としては国内で初めての美術館を開設した。この美術館は現在も存続している。ロシアで最も裕福な画家の一人となったアイワゾフスキーはフェオドシアの整備の仕事を行った。港湾設備の再建や、鉄道敷設の援助を行った。アイワゾフスキーに敬意を表してフェオドシア市議会は1881年にフェオドシア名誉市民の称号を彼に与えた。
1897年に80歳の誕生日を祝った。彼の功績をたたえて、ロシア皇帝の最高勲章の一つである聖アレクサンドル・ネフスキー勲章が授与された。
アイワゾフスキーは1900年5月2日にフェオドシアで没した。昔からのアルメニア教会の中庭にある彼の墓には、大理石の記念碑があり、そこにはつぎのように書かれている。「ここに死す。しかし、彼のことは人々の永遠の記憶に残る」。
アイワゾフスキーの作品は60年という長い創作の期間にわたっている。彼は自分の芸術の中に、自然の詩的なイメージと、歴史的事件や遠征などの場面の正確な再現とを統合させた。長い創作の年月の間にアイワゾフスキーは約6000点の絵を描いた。このすばらしい海洋画家の生存中にロシアと海外で120回の展覧会が開催された。
最後の日までアイワゾフスキーは鋭い観察眼を保ち、芸術への深い信念を保っていた。彼は迷うことなく自分の道を進み、研ぎ澄まされた感覚と思考を老年の時まで保持した。アイワゾフスキーの功績は世界中に認められている。彼は5つの美術アカデミーのメンバーに選ばれ、彼の海軍の制服は多くの国の勲章にちりばめられている。
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