持倉鉱山精錬所跡
第一章

2002年5月6日、我々は三川村某所に集合した
参加者は案内人の私、シンメイ先輩、匿名氏の3名であった
かつて同じサークルで活動してきた信頼できる仲間達である

新潟市内に住む私とシンメイ氏は私の車で現地へ着いた
匿名氏は自宅から自転車での来るとのこと
彼の家は下田村……軽く35キロ以上はある
彼の体力には流石に長年付き合ってきた我々でも、驚愕を禁じえない

集合場所で落ち合った匿名氏は、自転車を置き私の車に乗り込む
この先には長いトンネルがあり、自転車での通行は危険を伴う為である
阿賀野川沿いの幹線道路を上流方向に走り、トンネルを抜けると日本一の杉『縄文杉』がある
有名な観光地であるのだが、残念ながら我々はその前の橋を渡ることとする
橋の上から上流部を望む
初夏の柔らかな風が心地よい

この橋を渡ると五十島地区へ入る
……私にとっては望郷の念を感じる地だ
毎年の様にキャンプの為にここの駅に降り立ち、
片道一時間の道を遊びながら歩いたものだ

……感傷に浸っていても始まらない
我々の目的はこの奥地にあるのだ
山道への入口にそびえるコンクリートの塊
鉱山施設の一部だったのであろうか?
様子から言って昭和に入ってからのものであろう
今では知る者も少ない……

この先にはこのようなものが幾つかあり、
ここにかつて多くの人々がいたことを物語っている

ここからの道路は未舗装で狭い
気合を入れて一路、持倉鉱山へと向かう……
山道をしばらく車で走ると崖が崩れている
ここからは徒歩で山道を行くことになる
さらに数分歩くと川によって道が寸断されている
以前来た時には道があり、車も通れるほどの広さであった
10年の月日を感じさせる……


ここからは川岸の岩場を歩かねばならない
狭い川沿いは砕けた岩や道路の瓦礫で道が悪い
以前は写真の右側が河床であったのだが……
水の力強さを感じさせる

しかし、ここまで来れば目的の建物はあと少しである
写真中央に写る黒い建物が精錬所跡である

なお、前を行くのは案内人の私、後方はシンメイ先輩
川岸から上がると目前に建物が見えてくる
木々の合間に突然現れる異質な黒い影……
まるで何かに騙されているような感すらある

……いや、廃墟の魅力とはこのようなものなのだろう
自然と人工、現在と過去、既知と未知、可視と不可視……
それら合間に惹き付けられ、惑わされる者達を
この建物は待っているのかもしれない
第二章