持倉鉱山精錬所跡 第二章 |
突然、空間が開けた 建物の前は広場のようになっていた 広場は建物と同じ色の鉱物で一枚岩のようになっていた 恐らく舗装されていたのであろう…… この建物はカラミン煉瓦というもので作られているらしい 以前に聞いた話ではここでは銅と螢石を産出しており、 それらを取り除いた残りの鉱物を煉瓦状に固めこの建物の建築材料にしたとのことだ | |
重厚にして荘厳…… 廃病院のようにも教会跡のようにも見える 予備知識がなければ一体何の為にあったのか 見当もつかないに違いない | |
地元の人や渓流釣り客の情報を総合すると この建物は明治期に作られ、精錬所として使われていた その後、持倉鉱山全体を五十島鉱山が引き取り、 この建物は事務所として使用されていたとのことである 当時は多くの人が働いており、活気に満ちていたのであろう 驚くべき事に、寮はおろか学校まであったと言う その五十島鉱山も50年ほど前に閉山となった その為か明治期の建物とは思えないほどに 保存状態は良好である また、このようなカラミン煉瓦の建築物としては 国内に現存する唯一の建物という話である |
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左手にはアーチ状の石組みが残っていた 入り口か窓の跡であったのだろう このようなものを見ると人の臭いを感じない 廃墟というよりも遺跡といった感が強い 既に自然と一体化しているからなのであろうか? | |
アーチを下から眺める 既に壁の一部であったようには思えない 微妙なバランスで残っているのが不思議なぐらいだ この辺りは冬になると雪が深く積もる 果たして来年の春まで持つのだろうか…… |
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入り口の煉瓦は磨り減り、歴史を感じさせる 角が丸くなっていた……往来が激しかったのであろう この煉瓦は何を見つめてきたのだろう…… 活気、繁栄、栄光……そして悲しみ 様々な人々がこの上を通り、そして去っていった…… 彼は歴史をその体に刻み、そして眠り続ける |
第三章 |