持倉鉱山精錬所跡
第八章
外に出て一息入れる
煙草に火をつけゆっくりと息を吐く
……違和感

先ほどの言葉を繰り返すが
自然に入るという事は我々人間の基準から離れ自然の掟に従うという事である……
やはりいたか……ゆっくりと靴を脱ぐ

黒い生き物が貼りついている……蛭である
この地に蛭は二種類いる
川に住む小型で黒色の「チスイビル」と藪の中に生息している茶色地に黒の縦じまの「ヤマビル」である
シンメイ氏の足にはチスイビルが2匹、私の足にはヤマビル1匹が吸いついていた
……流石に写真はこのページの趣旨にそぐわないので割愛させていただく事をお許し願いたい

しかし、蛭だけで良かったと思う気持ちもある
この地には熊、野犬、蛇、スズメバチなども出没する
これらに襲われた場合、命に関わることすらある

このページを見る者にあえて忠告しておきたい
自然の中では我々人間は招かれざる客である……決して歓迎されることはありえない
如何なる場合であろうと自然を破壊する行為は厳に慎み、また自らの命を守る為に苦労を惜しんではならない
決して軽装備での来訪や単独行動をすべきではない
繰り返すが我々は招かれざる客である……そのことを肝に命じて行動されることを願う

では話を続けよう

匿名氏が崩れかけた階段を見つけた

どうやら対岸から見かけた大煙突への入口の様である
足場が悪く、足を乗せると次々と崩れていく

慎重に登ると大煙突の入口へと辿りついた
大煙突入口

丁度逆光になり写真写りが悪いがかなり巨大なものである
また保存状態もかなり良い
まるで南米や東南アジアの遺跡のような威容を誇っている

大煙突入口より中へ入る

かなり広く我々が立って歩いても差し支えないほどである
煉瓦がまったく崩れていない
閉山後ほとんど人が入っていないのだろう

操業していた頃には毎日人が出入りしていたのであろう
言い知れない物悲しさが漂う

大煙突内部

ここで銅を精錬していたのであろう
この画像では見にくいが煤のようなものが付着している
恐らく精錬用の窯に設けられた煙突だったと思われる
改めて大煙突を見上げる

このような山中にここまで大きな施設を作ったのだ
その労力たるや大変なものであったのだろう

日本が発展していく過程で銅の採掘は大きいものであった
この鉱山が繁栄していた明治期には日本の銅輸出は世界有数のものであった
日本の経済の一端を支えていたこの施設も今は森に朽ちていくばかりである……
終章