仙見鉱山
仙見鉱山は中蒲原郡川内村大字仙見小字門原に在りて同村落の西方仙見川左岸の高所に位す、
本鉱山は旧時鉛鉱を採掘したることありと云い現時油井與一の所有に属し探鉱中なり地質は古生代硅岩、
粘板岩及び石灰岩にして慨して北東に走り北西方に傾斜す、鉱床は古生層中に胚胎する層状の鉱体なり、
大切坑口の上部に露出する鉱床は三層より成る、其の走向は北60度西にして南西方5、60度に傾斜す、
上層は粘板岩を上盤とし石灰岩を下盤とし厚さ4、5尺、中層は石灰岩中に在りて厚さ2尺、
下層は石灰岩を上盤とし粘板岩を下盤とし厚さ3尺なり、
南方大瀧に露出する鉱床は北70度東に走り北北西43度に傾斜し厚さ4尺なり、
鉱石は閃亜鉛鉱、黄銅鉱、黄鉄鉱及び硫砒鉄鉱にして黄銅鉱は少量なり、ヒ石は灰鉄輝石及び少量の方解石なり
粟ヶ嶽に於ける鉄鉱床
粟ヶ嶽は中蒲原郡及び南蒲原郡に跨り五十嵐川、加茂川、
仙見川の発源する地勢険峻なる山地にして交通運搬は頗る不便なり、
地質は主として古生層より成り之を貫通して所々に小区域に花崗岩及び石英粗面岩あり、
古生層は硅岩、粘板岩、砂岩、石灰岩及び白雲母岩等より成る、
鉱床は粟ヶ嶽より4里の地内に於いて4区域に数多散在し主に花崗岩に接する古生層中に胚胎し扁桃状を成し厚さ5尺乃至20尺なり
本下田区域は粟ヶ嶽の南方及び南西方の地なり、南方姥ヶ懐の鉱床は最厚23尺、延長140尺あり、
払川に於けるものは厚さ15乃至20尺にして最上部の露頭は延長130尺あり、中ノ又澤に於けるものは厚さ平均10尺乃至14尺なり、
本川手川には数多の露頭ありて厚さは2尺乃至12尺あり、
大谷澤(親澤)に於ける2露頭は厚さ各6尺ありて1つは延長250尺に亙れり岳区域は粟ヶ嶽の北西の地なり、
鉱床は其の数13あり、厚さ8尺乃至12尺、最厚25尺にして延長は大なるもの190尺に達す袖山区域は粟ヶ嶽の北方の地なり、
鉱床は第三紀凝灰岩及び凝灰質頁岩中にあるもの重要にして大なるものは厚さ平均8尺、延長400尺余りあり
赤倉区域は粟ヶ嶽の東北東の地なり、鉱床は多くは石灰岩又は白雲母岩の下部に位し6箇所に露出す、
其の中最も大なるものは栃平にあり、其の厚さは30尺乃至60尺、
平均45尺にして1000尺以上之を追跡するを得鉱石は本下田及び岳区域に於けるものは磁鉄鉱、
袖山及び赤倉区域に於けるものは雲母鉄鉱又は赤鉄鉱なること多く硫化鉱物を含有し常に石英及び接触鉱物を随伴し時として之によりて囲繞せらる、
鉄の含有量は百分中45乃至60なり